中部電ミライズ 帯水層蓄熱システムの商用化検討
中部電力ミライズは、帯水層蓄熱システムの商用化に向けた検討を進めている。「ATES」の呼称で知られる同システムは、汲み上げた地下水から熱エネルギーを採り出して、建物の冷暖房を効率的に行う省エネルギー技術。熱利用後の地下水を帯水層に還元することで、帯水層に排熱を一時的に蓄熱し、後に利用するというスキームで、大気中に熱を放出しないことから、ヒートアイランドの抑制効果が期待されているカーボンニュートラルの時代に適したエネルギー利用策。
事業化にあたって障害になるのが、自治体が地下水のくみ上げによる地盤の沈下を防止するために設けている「揚水規制」だ。名古屋市の場合、環境保全条例で地下水の採取を規制しており、事業者が動力を用いて地下水を採取する場合、揚水機の吐出口の断面積が6㎠を超えるものや、10mよりも深い井戸は許可の対象となり、許可基準に適合しないものは設置が認められていない。
そのため、同市での事業化を検討する中部電ミライズは昨年、市に計画を事前説明。これを受けて市も、揚水規制を緩和する例外規定の運用可否などについて検討するため、有識者で構成する「名古屋市域における帯水層蓄熱システムの導入に関する有識者懇談会」を創設した。昨年12月、中部電ミライズを迎えて、計画する事業の概要と事業性を判断するための調査スケジュールについて説明を受けた。
さらに市はあさって29日に第2回となる懇談会を開催して、中部電ミライズの計画について改めて審議する。懇談会の内容は「公開することにより、同会の適正な運営に支障が生ずる」(市環境局地域環境対策部)として非公開。
なお、中部電ミライズは、自社グループの「環境マテリアリティ(重要課題)」に掲げる「脱炭素社会に向けた次世代ネットワークの構築」の一環として、愛知県岡崎市と協力して、国内最大規模となる熱容量数十MWhの岩石蓄熱システムとエネルギーマネジメント技術を用いたプラントの整備を計画している。
同プロジェクトでは、需給ギャップが生じて自然変動電源の出力が抑制された際に、余剰電力を岩石や溶融塩などの蓄熱材に熱エネルギーとして蓄え、必要な時に熱供給や発電することで安定供給とエネルギーの効率的利用を目指す。計画の実現に向けて同社は今年3月、市、東芝エネルギーシステムズと協力協定を交わし、岡崎市内で26年度末まで設備の整備に向けた調査を行う。
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