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広域機関 40、50年の電力需給シナリオ策定へ

 電力広域的運営推進機関は、40年と50年を対象とした電力需給シナリオの策定に向けた検討を開始した。昨年8月に開催された、岸田文雄・内閣総理大臣を議長とするGX実行会議は、電力システムが安定供給につながるものとなるよう、制度全体を再点検することを提示。これを受けて経産省は、電力・ガス基本政策小委員会において供給力確保の在り方を議論し、今年4月に「将来の電力需給に関する在り方勉強会」を設置した。同勉強会では、安定供給の確保や50年カーボンニュートラル実現の観点から、課題となり得る事項などについて、関係事業者からヒアリングが行われ、「今後は議論の場を広域機関に移し、10年超先の電力需給のあり得るシナリオについて策定を進めることとする」と整理。広域機関は、有識者を委員とする「将来の電力需給シナリオに関する検討会」を立ち上げ、このほど初会合を開催して、多様な視点での検討を開始したもの。
 同シナリオは、国、広域機関、電力などの関係者間で共有し、長期脱炭素電源オークションの円滑な実施や、計画的に電源開発を進める上での参考とすることを目的に策定する。エネルギー基本計画、供給計画、広域連系系統のマスタープランとは策定の目的が異なるため、同機関は、必ずしもこれらの計画などとの整合を前提とせずに検討を進める考え。今後の状況変化を踏まえて、5年ごとを目処に見直すことを基本としており、必要に応じて早期の見直しを行う。将来的には、エリア別のシナリオ策定を念頭に置き、同検討会では㎾、kWhバランス、将来的な調整力の必要量などについて検討した上で、全国ベースの需給バランスを複数のシナリオとして、24年度末までに取りまとめる。
 シナリオ検討にあたっては、多様性、客観性、事後検証性、発展性に留意する。具体的には、多様な意見をどのように採り入れてシナリオを検討するか―などがポイントとなり、専門的な知見を有する「技術検討会社・機関」に検討を依頼。同検討会社・機関には電力中央研究所、地球環境産業技術研究機構、デロイトトーマツコンサルティング合同会社の3者を候補に、今後依頼手続きを進める。
 なお、複数のシナリオについては、電化・新技術需要の旺盛な伸びに合わせて、脱炭素電源の新設・リプレースが進む「需要大・供給力大」、需要は大きいものの事業者の電源投資が進まず、供給力が不足する「需要大・供給力小」、需要が伸びず供給力が過多となる「需要小・供給力大」、需要は伸びず、事業者も電源投資を行わない「需要小・供給力小」―の4群に大別。これらの代表的なシナリオをはじめとした様々な需給バランスを検討し、課題を分析する。