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中部電 世界初、ダム熟成ウイスキーの試行

 中部電力は、地域経済の活性化に向けた新たな取り組みとして、世界初となる「ダム熟成ウイスキー」の事業化を視野に入れた試行を、自社の高根第二ダム(木曽川水系飛騨川)で開始した。電力各社が取り組みに協力する「ダム貯蔵日本酒」のウイスキー版を目指した独自のプロジェクトで、高根第二ダムの工事により988年に移転・新設された岐阜県高山市立高根小学校(07年廃校)の校舎を再利用して、今年4月にオープンした「飛騨高山蒸溜所」が造るウイスキーの樽を同ダムで貯蔵・熟成させて、新たな地域の名産として販売することを目指す。同ダムは全国的にも珍しい「中空重力式コンクリートダム」であるため、堤体の中が空洞構造になっていて、ウイスキー樽の保管場所が豊富にある上、内部は1年を通して気温が15度前後に保たれ、湿度も高いことから「ウイスキーの長期熟成に非常に適した、またとない環境が整っている」(同蒸溜所)という。
 そのため同蒸溜所は、立案したダム熟成ウイスキーの計画を中部電に話したところ、同社は「地域振興につながる」との判断から取り組みへの協力を快諾。事業化の可否を探るための試行としてこのほど、同ダムに2つの樽を運び、この後1年間かけて熟成の進度と香味などを調べて、商品化の可能性を探ることになったもの。なお、樽の数はこの後、さらに2~3樽増やしてテストの精度を上げる予定という。飛騨高山で200年超の歴史を持つ老舗―として知られる舩坂酒造店が運営する飛騨高山蒸溜所には、日本の独自技術(特許第6721917号)である鋳造製ポットスチル「ZEMON」が配備されており、同器の持つ銅と錫の有用効果によって飛騨川源流の雪解け水が高品質な蒸溜酒に産まれ替わる。それをさらにダムでまろやかに貯蔵させることで「新しいジャパニーズウイスキーの誕生につながれば嬉しい」(同)と期待している。同取り組みには、コロナ禍で主要産業である観光業が大きな打撃を受けた高山市も「新しい市の名産品となり得る」として注目しており、ダム貯蔵日本酒に続くヒット商品の誕生が待たれる。