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COCN 浮体式原子力基本設計移行を提言

 東京電力ホールディングス(HD)が参画し、産業界の有志で構成する産業競争力懇談会(COCN)は、約3年間にわたり取り組んだ「浮体式原子力発電」に関する検討結果を最終報告として取りまとめ、速やかな基本設計段階への移行に向けて、同原子力の基本設計を推進する「スタートアップ組織」の構築を提言した。既報の通り、東電HDの姉川尚史・フェローがリーダーを務めるCOCNの浮体式原子力プロジェクトは、福島第一原子力事故の教訓を踏まえて、地震や津波に強い原子力としてマサチューセッツ工科大学のGoley教授が発案した、浮体構造物内に原子力設備を設置する同技術に注目し、20年から成立の可能性を検討。このほど最終報告を策定し、同原子力の安全性上の特徴、利点などを整理した上で、産業界、大学をはじめ経産、文科、国交3省、原子力規制庁への提言を行った。

 同原子力は、海洋掘削リグとして建造実績のある円筒型浮体構造物に、原子力設備を搭載するもので、これを沖合30㎞以遠の洋上に浮かせて、海底ケーブルで既存の送電網に接続し、電力を需要地に送電する―という仕組み。原子力発電、浮体構造物、海底ケーブルの技術は確立されており、二重船殻構造の浮体構造物は、外部からの衝撃で損傷が生じた場合でも、容易に浸水しない構造。また、大型の浮体構造物で重心が下方にあるため、波浪による動揺も抑えられるなどの特長を有する。さらに、沖合の海上に設置する利点としては、津波の影響を大幅に緩和できることや、周囲の海水と自然対流で熱交換することで動力を要せず長期間の冷却継続が可能になることなどが挙げられている。

 同プロジェクトでは、同原子力の基本構造を理解し、成立性、安全性などを確認した上で、建造スケジュールやコスト、安全設備、長期運用時の影響、核セキュリティ、運用体制、必要な法整備などの課題を検討した。具体的には、初号機の建造期間は、法整備や許認可なども含めて14・5年程度、建造費は陸上の原子力と同等であることや、世界的に洋上での原子力利用の関心が高まっていることなどを確認した。さらに、現状では電力、メーカー共に既存炉の再稼働、運転期間延長などに注力せざるを得ない状況にあるものの、速やかな基本設計段階へ移行する必要性を指摘。電力・メーカーのOBの再雇用と、大学院修士課程の学生のジョブ型インターンシップを中核とし、電力、メーカーから少数の出向者を加えた新組織の設置を求めると共に、関係省庁の資金援助や法整備などの支援を提言した。