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エネ庁 揚水の採算性向上へ収入拡大を検討

 経産省エネ庁は、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う調整力確保での重要課題とする、揚水発電の採算性について検討を進める。再エネの自然変動性を平準化する蓄電機能と、CO2を排出しない慣性力の双方を大規模に有する発電方式は、現時点で揚水発電に限られている。その一方で、同発電は、揚水時のロスや運用コストの高さから、需要ピーク時などの利用に留まり、稼働率が低く採算性の確保が難しいことを同庁は指摘。さらに、30年までに設置後約60年が経過する施設が、計250万㎾程度存在し、廃止・機能停止のリスクが一層高まっており、採算性の向上を優先課題に、揚水の維持・機能強化を図る方向で検討するもの。
 具体的には、収入機会の拡大、効率性の向上・コストの削減の2つの観点から、採算性の向上に向けた今後の対応策を検討。収入に関しては、〇市場における下げ調整力の商品化、〇需給調整市場での固定速揚水の市場参加機会の拡大、〇発電機会の拡大―などにより増加を図ることを想定。優先給電ルールを前提とする市場設計の中で、下げ調整力は商品化されていないため、今後の系統利用ルールの見直しにおける、ゾーン制(予め混雑送電線を特定し、混雑処理の準備を整えた上で、混雑発生時に処理)やノーダル制(全ての送電線に対して混雑処理の準備をした上で、混雑発生箇所に処理)といった、市場主導型の導入に併せて、下げ調整力を商品化する方向で検討する。また、AIを活用した再エネ予測、上池運用の高度化により、発電機会を失わずに稼働率を向上させるための支援を検討する。
 一方で、揚水の費用削減に関しては、遠隔化が可能な制御機器の導入を通じた運用高度化など、蓄電時のロス・コストの低減を図る可能性を探ると共に、同低減に向けた支援策を検討する。これらの検討に加えて同庁は、揚水の新規開発の可能性についても重要課題として、電源投資の確保に関する議論と合わせて検討する考えを示している。