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北陸電 長期ビジョンテーマを具現する取組

 北陸電力が、30年度を達成年度とする「グループ長期ビジョン」のテーマに掲げる「北陸と共に発展し、新たな価値を全国・海外へ」を具現する、富山県入善町での「下山芸術の森発電所美術館」の取り組みが、全国の自治体や美術関係者から注目されている。北陸電は、984年に着工した黒部川用水路の改修工事により、925(大正15)年運開の黒東第三水力(6330㎾)の廃止と改修を決め、993年に同敷地内に新しい黒東第三水力(7200㎾)を設けた際、当時の町長から「貴重な旧黒東第三水力の建物を文化施設として残すことができないか」との相談を受け、これに応え、社是とする「地域社会との共生」の方針に基づき、同水力の建物を町に無償譲渡した。北陸電の厚意に対して町は「できるかぎり旧水力の面影を残した上で、施設特性を活かした『地方文化の新たな創造エネルギーを発電する芸術の発信基地』として使用する」(町文化振興財団)ことを決め、譲渡された同水力の施設改修を行って995年より、現代美術専門の「下山芸術の森発電所美術館」として開館した。

 それから27年を経て、今では「発電所美術館」の呼称が定着した同美術館は、大正時代の風格を感じさせる赤煉瓦造りの外観や、館内に展示された発電用タービン・導水管などの備品が「アーティストの芸術的創造力をかきたてる」(同)と評判で、天井高が10mもある広大な展示スペースを活かして現在、立体造形の展覧会を中心に、年間5本の企画展と芸術祭を開催する人気施設となっている。昨年10月から先月まで「セルフコラボ展」を開催した照明作家の市川平氏も「普通の美術館では望めない広大なスペースで、作家として実にやりがいのある仕事をやらせていただいた」と、同館の施設としての優秀性・独自性を賞賛する。そのため、開館以来これまでに80人超の作家の新作発表会場として利用されているほか「『水力ミュージアム』の名称で国際的にも知られている」(全国美術館会議)という。

 コロナ禍の影響で、全国の美術館が来館者の減少に悩んでいる中、開館以来、安定して毎年約1万人の年間利用者を迎える発電所美術館は、北陸電がグループ長期ビジョンに掲げる「北陸と共に発展し、新たな価値を全国・海外へ」の実現に大きく貢献している。なお、同美術館は、996年に国の有形文化財に指定・登録されたほか、後継水力となった現在の黒東第三水力も、994年に日本デザイン振興会から「発電所として初のグッドデザイン賞」に選定されている。