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環境省 脱炭素投資加速へ新たな出資制度導入

 環境省は、脱炭素事業への民間投資の促進に向けて、新たな出資制度を創設し、同制度の運営を担う「脱炭素化支援機構」を今年10月を目途に設立する。昨年6月に国・地方脱炭素実現会議が策定した地域脱炭素ロードマップは、脱炭素事業に意欲的に取り組む地方自治体や事業者を集中的・重点的に支援するため、資金支援の仕組みを抜本的に見直し、複数年度にわたる継続的・包括的な支援スキームの構築を提示。同支援にあたっては、民間投資の呼び込みを一層促進するための出資といった、金融手段の活用も含めて効果的な形で実施する―との方向性を示した。
 同ロードマップに基づき同省は、再生可能エネルギーや省エネルギーの導入、資源の有効利用、森林の保全・活用など、脱炭素社会の実現につながる効果的な事業であると共に、採算性はあるものの前例に乏しい、認知度が低い―などの理由で民間金融機関からの資金調達が十分でない事業に対して、出資や資金供給を行うための取り組みを推進。これまで実施してきた「地域脱炭素投資促進ファンド事業」を基盤として、財政投融資(産業投資)を財源に活用した、脱炭素促進のための出資制度を創設する。さらに、同制度の運営を担う新たな株式会社として、同機構を設立する。
 同省は、技術実証事業や補助事業などを通じて、これまでに脱炭素化設備の導入や、普及展開に向けた支援を進めてきたが、カーボンニュートラルの実現には、さらなる民間投資の喚起が不可欠―と判断。脱炭素化につながる民間ビジネスの動向に関する独自の調査・分析を進めて、新制度の導入につなげる考え。民間と行政の役割を明らかにした上で、脱炭素分野の民間ビジネスへの投資拡大を促す政策金融、補助金、情報的手法といった各種支援を検討する。
 ポータルサイト上で同省は、民間が実施する脱炭素事業に関する情報提供を呼びかけており、21年度に情報提供された事業をはじめとした300件程度の事業を抽出。同事業に関して、事業内容、CO2削減効果、収益構造・利益水準や、想定されるファイナンススキームと資金供給のニーズ、法的・会計的リスクを含めた事業リスク、次の案件・他事業者への展開といった事業の発展可能性、国全体の脱炭素化への貢献可能性―などの項目について調査を行う。
 さらに、政府が実施する脱炭素ビジネス支援策の周知と、脱炭素事業の情報収集を目的に、日本政策投資銀行、地方環境事務所、財務局、商工会議所などと連携して今年度、全国10か所程度で説明会を実施。同説明会や動向調査の結果から、CO2削減効果が比較的大きく、収益性・発展可能性などの観点で、他のモデルになり得る脱炭素事業を30件程度選んで、各事業の詳細情報を整理する。それぞれの事業については、年度ごとの収入、支出などを仮定して、キャッシュフロー表を作成すると共に、投融資が行われることを想定して、収益性のシミュレーション分析を試行的に実施。これらの結果を踏まえて同省は、民間の自己投資、金融機関による投融資、政府の政策金融、補助金について、主に推進を担う範囲などを具体的に検討・整理する考え。