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経産省 中国電の水力スマート実証を先進事例に

 経産省は、中国電力などが進める水力の遠隔監視に関する実証事業について、その成果を先進事例として「水力の保守管理に関するスマート化ガイドライン(GL)」で紹介し、スマート保安の導入を検討している他の水力事業者へ水平展開を図る考えを明らかにした。水力の遠隔監視制御は、電気事業法上において認められており、電力の水力設備では、IoT技術などの導入により、保守点検の効率化や省力化が既に進められている。一方で小規模な水力発電事業者では、手作業によるデータ収集が一般的であることなどを踏まえて同省は現在、同GLの作成に取り組んでいるところ。同GLは、ICTなどを活用した遠隔保守の導入を検討する水力発電事業者に、手引きとして活用してもらうため、スマート化技術の導入プロセスにおいて留意すべき事項や、計画立案のためのチェックリストなどを記載。加えて、同省が今年度補正予算を充当して取り組む実証支援事業のうち、中国電をはじめ長野、山梨、宮崎3県の企業局をそれぞれ採択した、遠隔監視に関するスマート保安実証の導入事例を、同GLで紹介する方針を固めた。
 同省は、実証採択各者による本格的な取り組みの実施を控えて、各者への聞き取り調査を実施。スマート保安技術の導入により期待される効果や、費用対効果の検証方法をはじめ、予算措置、デジタル人材の確保、ベンダーとの折衝、ネットワーク基盤の整備、セキュリティ対策などにおいて工夫した点などについて調査を行っており、同調査結果を整理した上で、スマート実証事例として事業ごとに同GLで紹介する考え。今年度は企画・導入、来年度には管理・運用段階のGLを作成する予定で、中国電などの事例に関しては今年度、導入における課題克服や留意事項、来年度は巡視の代替性などの実証成果について盛り込む見通し。
 なお中国電は、同実証として発電システムへのIoT・ICT技術の適用に関する研究開発を推進する。具体的には、水力の水車・発電機や取水ダムの取水ゲートに設置する、温度・振動・水位といった各種センシング値をデジタル化し、IoT装置に取り込んで蓄積。通信回線を通じて、データセンターに設けたクラウドサーバとの通信や、保守員事務所からアクセスしてリアルタイムにデータを参照するシステムの構築を目指しており、巡視点検でのデータ取得の省力化や、機器の健全性をリアルタイムで把握することにより、異常、不具合への早期対処につなげる考え。