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10電力 電力使用データを災害・空家対策に活用

 東京電力パワーグリッド、中部電力、関西電力、NTTデータの折半出資(資本金6億円)により、昨年11月に発足した「グリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合」は、東京都足立区との官民共同で、昨年11月から今年7月まで、同区内において実施した「電力使用データを災害対策と空き家対策に活用するための実証実験」の集約結果を明らかにした。既報のように同組合は、○スマートメーター(SM)によって得られる電力データの様々な利活用を目指した仕組みの検討、○同データに関するユース・ケースの実証と有用性の検証―を目的に、前記4社が、北海道、東北、北陸、中国、四国、九州、沖縄の7電力と電力中央研究所、足立区、日立製作所、日本気象協会などの官民56団体を会員に迎えて創設した「企業・自治体が有する諸データと電力データとを組み合わせて、社会課題の解決や新しいビジネス・モデルの創出を図る」(同組合)ための友誼組織。
 今回の実証では、母集団となる区民60人の各世帯の電力使用データに基づく、①災害時の避難行動率の向上、②住民在宅率の可視化による河川(荒川)氾濫時の想定被害者数の抑制、③空き家調査の省略化・簡易化―の各事業性などについて検証した。このうち①は、SMの特性である「30分ごとに電力使用量を計測・通知できる利点」を活かし、災害発生時に急激に電力使用量が減った住宅を「住民が避難した家庭」と見なし、未だ避難していない住民に対して「既に何時間・何分前に○人の近隣住民が避難しました」との具体的情報を提供することで、避難率のアップを目指すもの。実証の結果、単なる避難勧告だけではわずか20%(12人)に留まっていた「必ず逃げようと思う」との回答者に、避難勧告に加え、既に○人の近隣住民が避難した―という具体的情報を与えることで、同回答が2.5倍(50%・30人)にアップしたことから、同スキームは「有益な災害対策用ツールとなる可能性がある」(区)と判断した。
 また②では、①と同様の仕組みで住民の在宅率を地域別に可視化することで、避難の際の優先順位付けや、被害が集中した地域・避難者が多い地域への広報車の出動や防災無線の優先などが可能となるため、同スキームの採用で、荒川が氾濫した場合の想定被害者数を現行想定よりも約48%も抑えることが可能になる―との試算が導き出されたという。さらに③では、従来のマンパワーによる空き家の現地調査と、SMの統計データから推定した机上での空き家調査の結果を比較したところ、両調査の集計差が極めて僅差(約3600件と同3500件)だったことから、今後はSMを活用することで、調査期間の短縮化やコストの低減が図れることも判明した。同組合では今回の集約結果を基に、各スキームの円滑化と成果の向上を目指しながら、早期に新規事業・サービスとして商用化させたい考えだ。