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エネ庁 原子力立地国調査で中間意識層分析が重要

 経産省エネ庁は、エム・アール・アイリサーチアソシエイツに委託実施した「原子力立地国における国民との信頼関係醸成に向けたコミュニケーション強化に関する取り組み調査」の報告書を公表し、原子力利用に対して賛成と反対の間に位置する中間的な意識層に影響を与える要素分析や、都市部などの電力消費地域を対象とした広報などの重要性を同調査結果が示唆したことを明らかにした。国内における原子力利用には、原子力関係施設の立地自治体や住民などの関係者の理解と協力が必須。一方で立地自治体などの関係者は、原子力に関して様々な不安を抱えている実情を踏まえて、地域における情報共有の強化に向けた必要な措置を講じるため、米国、英国、仏国、スウェーデンを対象に、各国の原子力利用に関する国民意識や、コミュニケーション強化に関する取り組みの調査を実施したもの。
 同調査報告によると、原子力発電利用に対する超党派的な支持が概ね得られている米国では、世論においてもほぼ一貫して賛成派が多数存在。政権により原子力政策が揺れ動いてきたスウェーデンは、世論の原子力利用に対する賛否も揺れ動いており、これら両国では国の原子力政策と国民の原子力利用に対する賛否との間に、ある程度の相関関係があることが判明。一方で、近年政府が原子力の新設を積極的に進めようとしている英国においては、国民の支持が顕著に増加しているという傾向は見られず、国の原子力政策を含めて、どのような要素がトレンドを変化させる要因となるのかを同定することは容易ではないが、「やや賛成」、「やや反対」、「分からない」といった中間層で意識の変動が大きいことが共通しており、今後は対象を拡大した調査を行って中間層の意識に影響を与える要素を分析し、施策の参考とすることは有意義―との考えを示した。
 また、ステークホルダーとのコミュニケーションに関して仏国では、981年に「地域情報委員会」を導入し、原子力立地地域の情報共有の場を設置。英国には「サイトステークホルダーグループ」が、スウェーデンには地域安全委員会があり、それぞれ原子力施設周辺地域のコミュニケーションを促進している。同調査結果は、こうしたコミュニケーション組織の設置が法的に義務付けられている国、全国で概ね統一されている国、設置の義務は無く全国統一的な組織はない国―があることを示した上で、これら組織の位置付けと活動の実態に相関関係は見られない―と報告。一方で、事業者や自治体が自主性を発揮して設置した組織の方が実効的な活動を行っている可能性を指摘している。