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文科省 核融合発電実用化に向け実証試験棟整備

 文科省は「わが国におけるエネルギーの長期的な安定供給と、環境問題の克服を両立させる将来のエネルギー源」(同省)として期待する、核融合エネルギー発電の実用化を目指して、核融合炉(原型炉)ブランケット開発のための「物理模擬体を用いた安全実証試験を行うための試験棟」(同)を新たに建設する。核融合炉を用いる核融合エネルギー発電は、ウランやプルトニウムなどの重い原子核が中性子を吸収して、軽い原子核に分裂する際に発生するエネルギーを、原子炉で取り出して発電する「核分裂反応」を利用した現在の原子力発電のスキームとは異なり、軽くて燃えやすい水素の同位体である重水素と三重水素を燃料に、炉内で重水素と三重水素の両原子核を融合させてヘリウムと中性子を生成させる。この過程で反応前の重水素と三重水素の重さの合計より、反応後に生じるヘリウムと中性子の重さの合計の方が軽くなり、この軽くなった分のエネルギーを原子炉で取り出して発電するという仕組み。
 核融合エネルギー発電のメリットとしては、○少量の燃料から膨大なエネルギーが得られる(1gの重水素・三重水素燃料から、タンクローリー1台分の石油=約8t=相当のエネルギーが得られる)、○燃料となる重水素・三重水素を生成する原料となるリチウムが海中に豊富に存在するため、資源枯渇の恐れがない、○核融合反応は暴走せず、核分裂と比べ安全対策が比較的容易である、○発電の過程において温暖化の原因となるCO2を一切発生させない上、高レベル放射性廃棄物も発生しない―などの高い安全性と環境保全性、さらに燃料調達の容易さを誇る。そのため文科省は、日本原子力研究開発機構の核融合研究部門と、放射線医学総合研究所が統合して、16年に創設された量子科学技術研究開発機構を計画推進組織に、同機構の六ケ所核融合研究所(青森県六ケ所村)内に、物理模擬体を用いて安全実証試験を行うための試験棟を新設することを決めたもの。実証施設は、同機構が東電設計に委託して行った設計に基づき、S造り・3階建て、延床面積2945㎡の規模を予定しており、建築のほか、電気・機械設備、外構―の各工事を一括して発注する施工会社を、競争入札で今年8月末に決定の上、早期に着工して21年3月の完成を目指す。