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特集号「炭素循環エネルギーシステムについてー後編」

▼ CO2の代替燃料転換

 火力発電を利用する限り、そこから排出されるCO2をどう処理するかは大きな課題である。

 世界のエネルギー需要とその流れと構成を図4に示すが、図示される通り、CO2を原料として利用する先は、もはやエネルギーとして使う燃料(合成燃料)分野でしかあり得ないことがわかる。合成燃料を製造するために再生可能エネルギー電力を利用することに対し、できた電気は直接利用すればよく、代替燃料にする必要はないとの意見もあろうが、電気は安定需給できるからこそ社会インフラの礎になっているのであり、安定供給できない再エネ電気を社会インフラの礎にしようとするのであれば、前述してきた通り蓄電池や水素と併用せざるを得ない。そうであるならば今ある社会インフラで対応可能な合成燃料に転換し、現状の一次エネルギー源を代替する方法もあるのではないかと考える。

 合成燃料を製造する前提として、エネルギーポテンシャル的に低位にあるCO2を、高位のエネルギーポテンシャルを持つ物質に変換するために、そのエネルギー源として再エネを用いることは必須条件となる。図5にそのフローを示す。

 この中でも基本的に大量のCO2排出量対応を可能とするためには、現段階では、太陽光、風力、水力発電電力を利用した電解水素によるCO2還元、太陽熱などを利用した高温水蒸気電解水素によるCO2還元が期待される技術である。

 いずれも電気化学変換と熱還元反応を組合せた反応系により合成燃料を製造するエネルギー変換法である。さらに、昨今高温水蒸気電解時にCO2も同時に酸化し、H2、COを主成分とする合成ガスを製造する共電解技術についても注目され始めている。この場合、太陽熱の利用が有効となる。

現在、このような再エネを利用したCO2から合成燃料を製造するプロセス開発は、特に欧州で「Power to Fuel」という形で活発に進められ始めている。特に積極的に取り組んでいる会社がアウディであり、この新合成燃料は「e-fuel、e-gasoline、e-diesel」などと称されている。

 また、一部ベンチャー企業では「Blue-Fuel」などとも呼び、積極的な開発が行われている。