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特集号「炭素循環エネルギーシステムについてー前編」

▼ はじめに

 18年7月に発表された我が国の第5次エネルギー基本計画では、30年のエネルギーミックスの確実な実現へ向けた取組みの更なる強化を行うとともに、新たなエネルギー戦略として50年のエネルギー転換・脱炭素化に向けた挑戦が謳われている。パリ協定を批准した日本は中長期計画として、「30年度までにCO2排出量を13年度比26%減とする」「50年までに同80%減とする」などの目標を立てているが、その期限は刻一刻と迫りつつあり実用化水準にある技術を駆使し、経済性についてはFIT制度のようなものを取り入れつつ社会実装可能な分野から早期実行に移していく状況下に来ていると考えられる。

 日本のCO2排出量は、年間12・7億t(14年度)に上り、中国、アメリカ、インド、ロシアに次ぐ世界第5位の排出量である。その削減対策としてこれまで「CO2固定化有効利用分野の技術戦略マップ2010(経産省)」を基に、CO2分離回収を含むCCS(Carbon Capture and Storage)技術の開発、人工光合成技術や藻類バイオ燃料製造などのCCU(Carbon Capture and Utilization)技術の開発が行われてきた。CCS技術は大量のCO2処理が可能であり、「全国貯留層賦存量調査(RITE)」などの報告書に因れば日本の貯留ポテンシャルは凡そ1461億t-CO2との報告もある。単純計算上は100年以上対応可能な技術ではあるが、現状圧入圧は20MPa程度と高く、その動力を配慮すると貯留実効量は小さくなってしまうことや、貯留後の維持・監視費用も継続的に発生し、コストとしてエネルギー価格に付加され続けられるだけで、そこには新たな価値が生まれる訳ではないため、サスティナビリティの観点からも同量規模のCO2処理が可能なCCU技術の確立が望まれるところである。このような大量のCO2排出量削減の実現に向け人為的に極めて短いタイムスパンでCO2をリサイクル利用する炭素循環(Anthropogenic Carbon Cycle:ACC)エネルギーシステムの検討は非常に有用と思われる。

 そのためには、まず日本の一次エネルギーフロー構造を十分理解した上で効果的な手段を検討する必要性がある。