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環境省 カーボンプライシングの審議を本格開始

 環境省は7月30日、東京都港区の三田共用会議所で「カーボンプライシング(CP)の活用に関する小委員会」の第1回会合を開催し、CPの導入に向けた審議を本格的に開始する。CPに関しては、これまで有識者による検討会において論点整理などの議論を進めてきたが、同検討会は勉強会との位置付けであったことから同省はこのほど、中央環境審議会地球環境部会に「CPの活用に関する小委員会」を新設。審議会という重要事項を審議する場に検討の場を移すことで、CPの導入に向けた取り組みについて、ステップアップを図る意向だ。今年3月に行った有識者検討会の取りまとめでは、「様々なステークホルダーから意見を聞きながら、国民的な議論として、わが国にとって最適なCPの形についてさらに検討を深めていく」ことなどを要望。これを踏まえて同省は、同小委を通じて、有識者に加え、経済界、市民団体、投資家など、多様な主体が議論することで、「導入に向けて前向きに検討を進める」考えだ。

 一方で電気事業連合会は、CPのあり方に関する検討会での議論に関して昨年10月、エネルギーミックスの観点からもCPの導入に反対する考えを公表。省エネルギー法やエネルギー供給構造高度化法が定める各目標水準に向けて、取り組みを進めている現状下で、CPが重複して導入されることは許容し難い―との意見を示した。また同月に、日本経済団体連合会も「今後の地球温暖化対策に関する提言」を公表し、既に国内において、明示的CPとして地球温暖化対策税が導入されているほか、暗示的CPでは石油石炭税をはじめとするエネルギー諸税、FIT制度、省エネ法、高度化法などの規制や、民間による「経団連低炭素社会実行計画」など、事業者は多層的な施策・取り組みを展開していることを指摘。明示的な施策のみをもってCPを論じるのは適当ではなく、暗示的な施策・取り組みを含めた、幅広い概念として捉えた上で、その国際的な負担水準を比較し、効果について議論すべき―との考えを表明している。これら経済界のCPの導入に関する懸念に対して、中川雅治・環境相は、パリ協定やSDGs(国連が定めた持続可能な開発目標)を端緒に、世界が脱炭素に向けて大きく舵を切る中で、「脱炭素化に向かうビジネスが稼げる価格体系を形成するということで、CPがそのドライバーとしての役割を果たし得る」との考えを強調。諸外国においても、CPの様々な課題を乗り越えるための工夫を行っていることを例に、「いろいろな課題を審議会の議論で乗り越える」ことを期待した上で「審議会での議論は、予断を持たずに行うことから始めていく」考えを示している。