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エネ庁 長期安定稼働など地熱価値を再評価

 経産省エネ庁は、FIT・FIP制度における、27年度以降の地熱の調達価格・基準価格に関して、引き続き支援を行うことを基本に、来年度の調達価格算定等委員会で検討する考えを示した。

 地熱の両価格については、向こう3年間の複数年度の価格を取りまとめており、26年度までの価格を決定。新規開発地点でエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が自ら探査・掘削を実施し、その結果を事業者に提供する取り組みが検討されており、事業者の開発リスクの低減が見込まれるため、27年度の取り扱いに関しては、今年度以降の同委員会で決定する―としていた。
 太陽光などと比べて、稼働期間が長い、開発リスク・コストが高い―といった地熱の特性を踏まえて同庁は、中長期的なコストダウンを検討する。来年度には同委員会で業界ヒアリングを予定しており、自立化に向けた取り組みを確認する考え。そのため、27年度以降の取り扱いに関しては、業界団体からの説明も踏まえた上で、来年度の同委において検討を進めることを提案したもの。一方で、業界団体に対して別途実施したヒアリングでは、事業の予見可能性確保に向けた配慮が必要―との意見があり、自立化に向けた取り組みで、来年度までに一定の進捗が見込まれることを前提に、27年度も引き続き支援する考えを示した。
 また同庁は、調達・交付期間の終了後も、長期にわたって安定稼働が見込まれる、地熱の特性を踏まえた支援の在り方について、検討する必要性も指摘。長期稼働が可能という特性を必ずしも評価しきれない、現行のFIT・FIP制度と、他の措置との役割り分担を検討すると共に、同制度においても、調達・交付期間終了後の便益も加味した、価格算定など、実態に合わせた支援の在り方を検討する。
 同庁は、事業者からの定期報告データに基づき、地熱の資本費・運転維持費の規模別内訳を分析。資本費は、100㎾未満の平均値が㎾あたり192万円、100~1000㎾は同153万円、1000~1.5万㎾は128万円、1.5万㎾以上は61万円となった。規模が大きくなるほどコストが低減し、1000㎾を超えると特に、低コストでの設置が可能となることが分かった。運転維持費に関しては、得られたデータが少なく、案件間・年度間のばらつきが大きいが、規模によるコスト差は見られなかった。30年エネルギーミックスが示す150万㎾に対して、25年3月末時点の地熱導入量は65万㎾。25年度の買い取り価格は、1000㎾未満でkWhあたり40円、3万㎾以上で同26円とし、1000~3万㎾の範囲では、容量に応じて連続的に価格が変化する「フォーミュラ方式」を採用している。
 なお、国の全面的な支援により、JOGMECが実施する「地熱フロンティア・プロジェクト」の候補地として初めて、今年10月に秋田県湯沢市を選定。来年度は、国内外における既開発・開発中のコスト実績などを参考に、コスト低減に向けた必要な施策、対応策や、コスト低減見通しについて検討を進める。カーボンニュートラル価値、ベースロード電源価値、エネルギー安全保障に寄与する国産・内製化、調整電源機能の可能性―といった、地熱特有の価値も再評価し、地熱価値の向上につながる施策を検討する。