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文科省 原子力人材層の拡大へ産学連携強化

 文科省は来年度、電力各社が参画する「未来社会に向けた先進的原子力教育コンソーシアム(ANEC)」における、原子力人材層のすそ野拡大を目指して、産学連携の取り組みを強化する。

 ANECは、国内大学・大学院、研究機関と原子力産業界の連携による、相補的・持続的な枠組みとして、21年度に創設。原子力人材の育成機能を維持・充実させるため、共通基盤的な教育機能強化を推進している。ANECの活動に対して同省は「国際原子力人材育成イニシアティブ事業」を通じて支援しており、昨年8月に示した「今後の原子力科学技術に関する政策の方向性」を踏まえて、来年度の同支援事業を見直す。トップクラスの専門人材育成と、他学部・他学科の学生、研究者、社会人といった多様な人材育成への取り組みを新たに公募する考え。
 このうち、原子力人材の幅・人数の拡大を図る、多様な人材育成に向けた公募テーマとして同省は、原子力産業に関わる企業と、大学との連携プログラムの構築―を例示。企業に対して、ANACの活動への理解や参画を促すための取り組みを充実・強化する。同支援事業を通じて、大学・企業間の学生・研究者による交流機会の拡大をはじめ、企業職員の大学教育への参画、学生のインターン・実務経験の拡大、企業による実験・実習の場の提供、リカレント・リスキリングカリキュラムの提供などを幅広く展開する考え。同支援に対し来年度予算(案)で約6億円を計上する。
 カーボンニュートラルの実現や、エネルギー・経済安全保障などの観点から、原子力の重要性が高まる一方で、原子力分野の研究開発における日本の国際競争力は、この20年間で大きく低下。近年は、原子力関連分野での質の高い論文数の国際順位も10位前後と低迷しており、原子力関連学科などへの入学者数の減少が顕著となっている。日本が将来にわたって、原子力の利活用を図るには、関連する多様な人材の育成・確保が必要不可欠。同省は、ANECの活動を、原子力人材育成の中核事業として位置付け、幅広い参画機関の下で、産学連携の取り組みを一層推進する。