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JICA 電力と世界で新規水力の開発支援

 JICAは、電力の協力を得て今年度より、途上国を中心とした世界各国で、新規水力の開発を進める新しい取り組みを開始する。世界的な潮流となったカーボンニュートラル(CN)の実現に加えて、ロシアによるウクライナ侵略を引き金とする「世界初となるグローバルなエネルギー危機」(ファティ・ビロル国際エネルギー機関事務局長)に対応した国際貢献事業で、日本の有する先端技術や知見を活かして「世界中の誰もが安心して資源とエネルギーを使える世界を構築する」(JICA)ことを目指した、①エネルギー利用の低・脱炭素化、②電力アクセスの向上、③持続可能な鉱物資源管理―を骨子とする「CNに向けたトランジション(脱炭素化への移行・転換)支援」という取り組み。第一弾として、温室効果ガスを排出せず、燃料なしに長期間発電することが可能で、ベースロード電源として利用できる上、揚水式のようにピーク電源や変動制再生可能エネルギーの調整電源として用いることができる融通性も持ち、発電に加えて灌漑や治水にも活用可能な水力の優位性に着目し、世界大で新規水力の開発を支援する。
 一方で水力は、初期投資が巨額となり、環境対応・社会配慮などにより計画立案から運開までのリードタイムが長いため、同分野で世界有数の知見を持つ日本の電力の協力を得て、アジア・アフリカ・大洋州を中心とした世界各国で新規水力の有力候補地を発見し、担当行政や電力公社などと協力して事業化を支援する。支援対象となる地域は、アジアではメコン河流域、アフリカではコンゴ・インガ、大洋州ではソロモンなどを想定しており、いずれの国・対象地域でも、ベースロードあるいは調整力としての水力のニーズとポテンシャルを調査・分析する。特にアジアでは、メコン河流域における水力のカスケード(縦続)運用、アフリカでは大規模水力の開発、大洋州では調整力の開発が、支援の中心となる。これらを含めた委託事業「全世界水力発電分野に係る調査及び技術支援業務(水力開発・系統開発)」を受託した電力は、始めに対象国・地域を選出して、各国のエネルギー政策を理解した上で、〇水力開発に関係する諸情報の収集と確認調査、〇系統開発に関する戦略作りへの助言、〇技術協力、〇水力関連分野における研修の実施と助力―などを、今月中旬から24年2月末(予定)まで行う。なお、同業務では現地調査は行わず「主に日本国内において専門的見地から調査や分析、技術的助言、資料作成を行う」(同)。業務を委託する電力は近く決定する。