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JICA 電力の協力でウクライナ緊急支援

 JICAは、日本の電力と協力し、電力施設への攻撃により国家存亡の危機に立たされているウクライナを支援するための緊急復旧・復興プロジェクトを開始する。侵略から来月で1年になるロシアの蛮行に対して「緊急的・長期的に同国の人道支援ニーズに迅速に応えるための特別の取り組み」(JICA)で、戦時下において当該国のインフラ復旧と復興を支援する「当機構として、これまでに先例のない挑戦となるプロジェクト」(同)。来月よりスタートする「ウクライナ国緊急復旧・復興プロジェクト」は、発電所への攻撃が今も続くウクライナの主要自治体(オデーサ、ミコライウ、キーウ、ハリキウ、ドニプロ、ヘルソン)の被害状況と電力供給の現状などを調査によって把握した上で、阪神淡路大震災や東日本大震災などの巨大災害で、発電・送配電施設の被災を経験した日本の貴重な知見と教訓を活かして、ウクライナにおいて電力供給システム(電源、系統)復旧・復興計画の策定支援を行うと共に、復旧事業にも主体的に協力し、破壊された都市基盤の本格的な復旧と各自治体の復興を支援する国際貢献事業となる。
 戦時下での取り組みとなることから、絶対条件として「プロジェクトに協力する日本の電力関係者の安全」を第一に置き、そのため同プロジェクトは「邦人協力者のウクライナ入国を基本的に想定しない」ものとし、現地での調査活動は全て、周辺国のポーランドまたはモルドバなどの第三国で行う。さらに将来、停戦などによって戦況が安定した後、JICAが規定する安全対策措置上「関係者のウクライナ入国が可能」と判断した場合など、支援先となるウクライナエネルギー省や地方自治体・国土発展・インフラ省、同国送電公社などの要請によって、電力関係者がウクライナに入国する必要が生じたケースにおいても「プロジェクトに協力(受託)する発注者と相談の上で対応を検討する」ことで、事業協力者に戦禍が及ばないように留意する。
 調査期間は来月中~25年2月を予定しているが、戦局の行方により当初計画が変更する可能性もある。なお、基本方針として、ウクライナにおける戦時下でのインフラ復旧は「必ずしもロシアが破壊する以前の状態に戻す」ことに拘泥せず、日本政府がこの後、決定するウクライナ向け無償資金協力事業「緊急復旧計画(包括方式)」の円滑な実施に向けた調整―に主眼を置く。国際社会に日本の電力の存在を強くアピールできるプロジェクトであり、今後の成果が期待される。なお、協力会社は月内を目処に決定する。