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東北電など 次世代放射光施設、建屋工事は鹿島

 東北電力やユアテックが取り組みに協力する「次世代放射光施設」の基本建屋の新築工事を、鹿島が担務することが決定した。「巨大な顕微鏡」と呼称される同施設は、原子レベルで物質の構造を分析できる最先端の研究設備で、燃料電池やリチウムイオン電池の開発にも利用できる優れた特性を有する。同施設の整備を目指す文科省は「官民地域パートナーシップのスキームによる同施設の建設」を決め、量子科学技術研究開発機構と共に、同施設の整備・運用を担務する民間パートナーとして、東北経済連合会(会長=海輪誠・東北電会長)、宮城県、仙台市、東北大学、光科学イノベーションセンターを選出。以来、東経連と同センターが中心となって、仙台市の東北大・青葉山新キャンパスに設ける同施設の施工計画を決定し、昨年1月より基本建屋の敷地造成を、橋本店に委託して進めている。
 次世代放射光施設は、1周346mのリング型をした中型高輝度加速器と、放射光を利用する実験施設・ビームラインなどを収容する基本建屋で構成する。整備主体は、加速器本体が国(量子研)、基本建屋は民間(同センター)とし、実験施設とビームラインは官民共同、付属施設となる研究準備交流棟は同センターがそれぞれ整備主体となる。光科学イノベーションセンターが今回、鹿島に工事を発注した基本建屋は、S一部RC造り・地下1階地上2階建て・延床面積2.5万㎡の規模で、工期は23年3月末までを予定している。施工中の21年6月より受電を開始し、ライナック・蓄積トンネルのコンクリート打設後の養生を同10月までに終えた後に「電源・空調設備などの運用開始を目指す」(同センター)という。発注額は非開示だが、概算事業費は、基本建屋が112億円、加速器が170億円、ビームラインが60億円、交流棟が25億円―となっている。これらを合わせた同施設の建設費約370億円のうち、国が190億円、地元自治体や同センターが180億円を負担する。
 東北電は、基本建屋の整備工事を主導する同センターが創設された16年に、同センターに「施設利用権付き出資」として5000万円を拠出したほか、昨年3月にも、整備費の支援として6億円の浄財を提供して取り組みに協力している。なお東経連は「次世代放射光施設の稼働後10年間の地域に与える経済効果は1.9兆円に上る」と試算している。