三菱総研 政府の原子力建設目標による影響
三菱総合研究所は、フランス・英国では、政府による原子力拡大方針といった、原子力建設目標の提示が、その後の人材戦略の策定や実行組織の設立につながっている―との調査結果を示した。
このほど経産省が開催した原子力小委員会で「諸外国における原子力建設目標に関する人材・サプライチェーンへの影響調査」の結果を報告した。米国、フランス、英国について調査を行い、このうち建設目標を今年に入ってから提示した米国では、サプライチェーンへの影響が未だ明らかでないことを確認。フランス・英国においては、政府による原子力拡大方針も受け、産業界が精力的に、人材・サプライチェーン支援に向けた動きを活発化させていることが分かった。
両国では、政府による原子力拡大方針と、産業界の人材・サプライチェーン動向が「軌を一にして」進められ、両者による協力関係の下で、目標や投資規模、実施体制を構築。これらの調査結果から同研究所は、政府と産業界が共に取り組む重要性を指摘した。
フランスでは、22年2月にマクロン大統領が、EPR2(改良型欧州加圧水型炉)を、最大14基新設する計画を発表。35年までに初号機の運開、50年までに14基を運開させる目標を示した。同計画を受けて、同国原子力産業界は、10年間で10万人採用を目標に掲げ、採用拡大・設備投資や、フランス電力の再国有化、事業買収などを進めている。
最大14基の建設プロジェクトについてマクロン大統領は、電力需要の増加、環境移行に加えて、既存炉の運転期間延長の先を見据えた計画―を直接的な理由に挙げた。産業界は、同目標の発表前から、原子力再興への盛り上がりと歩調を合わせて、人材確保・育成戦略の策定を進めており、目標発表以降は、人材確保に向けた取り組みを本格化している。21年に設立した原子力職業大学が、奨学金制度の拡大(24年度以降は300~400人が対象)や、原子力の魅力を高める取り組みを推進。原子力産業協会は23年4月に、人材ギャップ分析「MATCHプログラム」を発表し、今後10年間の原子力動向に合わせた、人材ニーズ分析として、約10万人の追加雇用が必要―と結論付けた。
10万人採用の目標に向かって、産業全体が動き出しており、19年に187社だった同協会の会員企業も、24年には600社に増大。23年2月に開始した、大統領を議長とする原子力政策評議会は、今年3月に第4回会合を開催した。
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