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規制庁 原子力分野でのAI活用へ取組加速

 原子力規制庁は、原子力規制活動などにおける人工知能(AI)の活用に向けて、調査・検討を加速する。

 原子力分野でのAI利用に関しては、国内外で検討が進められており、国内では今年6月、関西電力が米国・オープンAI社との連携を発表。オフィス業務のAI化に加えて、原子力を含む各事業部門において、AI適用を進める考えを示した。   

 30年に向けて関西電は、原子力分野でのAI・ロボットによる異常検知、点検自動化に取り組む方針を提示。既に火力分野では、AIによる巡視点検自動化システムや、非GPS環境下自律飛行型ドローンによる煙突内部点検を導入しており、30年に向けて生成AIを利用した工事プラン提案や、法令チェックなど工事書類の自動生成を目指す。
 米、英、カナダを中心とする海外諸国では、原子力安全分野におけるAI技術規制の検討が進められている。そうした中で規制庁は、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)の「RegLabプロジェクト」に参画すると共に、業務の効率化や研究活動でのAI活用について、取り組みを進める。OECD/NEAの同プロジェクトは、国際的な連携・協力の下で、AIなどの革新的技術を、原子力分野に適用するにあたっての技術的・規制的課題について検討するもので、27年8月までに4つのプロジェクトを実施する。今年4月に初回の理事会が開催され、最初のトピックとして「AIによる運転支援」を選定。今後、1年に1回程度、対面のワークショップが開催される予定。
 AIを活用した審査業務に関して、規制庁は来年度予算0.7億円を新規要求し、調査・開発に取り組む方針を示した。新規制基準に適合したプラントの改造工事や、原子炉の建替えなどに伴う、審査業務量の増加が見込まれる中で、今年5月にAI法が成立したことなどを踏まえて、来年度から審査業務の支援に、大規模言語モデル(LLM)をはじめとする、AIを活用するための調査・開発を行う。また、緊急時モニタリング技術高度化事業(来年度要求額5.1億円)にAI事業を新設。過去の気象データと放出源情報を用いて計算した、放射性物質の拡散状況をAIが予め学習し、緊急時には当日の気象データやプラント状況から類似状況を提示。モニタリングポストの実測値を取り込むと共に、修正していくことで、放射性物質の分布を可視化し、緊急時モニタリングの意思決定を支援する取り組みを進める。
 研究活動では、生成AIを用いた火災影響評価の自動化、数値計算のAIによる高速化など、AIを使った解析、予測手法の調査・検討を推進。業務効率化に向けて今年度から、マイクロソフト社のCopilotを試験的に導入し、一部の職員が実業務に活用している。定常業務などへ生成AIを積極導入するため、来年度機構定員要求では業務改革推進室長の設置などを要求しており、規制庁は今後、これらのAI活用に向けた活動や、情報収集を一層加速する。