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東電RP 大正池の堆砂対策を官民共同で推進

 東京電力リニューアブルパワー(RP)は、自社の霞沢水力(3.9万㎾)が調整池として使用している大正池の堆砂と、梓川の河床上昇の両解決を図るため、国交、環境両省や林野庁、長野県、松本市などと新たな取り組みを開始する。全国有数の山岳景勝地として知られる上高地の人気スポットである大正池は、915年に噴火した焼岳から排出された多量の泥流によって形成された歴史の短い湖沼で、現在も焼岳や梓川の上流から土砂が流入するため、東電RPは貯水容量の維持に向けて毎年、11月の上高地の閉山後に約1.8万㎥の土砂の浚渫を行っている。同池の容量は、記録が残る928年には71万㎥であったが、976年には8万㎥まで減少したことから、東京電(当時)が翌977年より毎年、年堆砂量と同レベル(1.8万~2万㎥)の浚渫工事を行っている。
 浚渫にあたって同社は、観光客への影響を考慮し、観光シーズンを避けた11~12月に工事を行っている上、土砂浚渫を全て浚渫船で行い、濁水が発生しないよう送水管を使って沈殿池に放水し、上水を大正池内にある霞沢水力の取水口へ排水する独自工法を採用して、周囲の環境に配慮している。さらに堆積土砂の再活用や河川への還元なども積極的に行っているが、搬出した土砂を貯めるための土砂置き場が「十数年後には満杯になる見込み」(同社)という。 大正池と梓川の堆砂・河池床上昇については、国や自治体も以前から問題視しており、昨年7月の豪雨では「河童橋上流で遊歩道の流失が確認された」(環境省松本自然環境事務所)ことから、同所のほか、国交省松本砂防事務所、林野庁中信森林管理署や県・市、さらに民間から、東電RPの松本事業所を迎えた検討組織「上高地河床上昇対策検討部会(仮称)」を創設して、今年度下期より、土砂搬出の在り方や周辺施設のかさ上げの可否、新たな砂防施設の整備―などについて、官民で協議することになったもの。
 同部会は、上高地の目指すべき将来像を成案した「上高地ビジョン」(14年策定)をまとめた既設の官民検討組織「中部山岳国立公園上高地連絡協議会」のWGと位置付け、今月末に創設する。中部山岳国立公園内となる大正池の周辺は、工作物の建設などの規制が厳しい「特別保護地区」に指定されている上「国の特別名勝、特別天然記念物にも指定されている」(同)ため、景観・生態系の保護を第一に、東電RPなどは「本年度内に対策の大筋を決める」考えだ。