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JICA 電力の協力でヨルダンで系統対策推進

 JICAは日本の電力の協力を得て、中東のヨルダン王国で「電力系統運用能力強化計画」策定支援のための準備調査を開始する。天然資源に乏しいヨルダンは、エネルギーの安全保障を確保するために、12年に制定した「再生可能エネルギー及び省エネルギー法」で再エネの開発を進めており、その結果、同国の発電設備容量に占める再エネの割合が、12年のゼロから20年には26%と急速に拡大した。この一方で、再エネの出力変動性によって系統システムの不安定化が一気に進み、近年は全国レベルでの大規模停電が発生して社会問題になっている。こうした現状の改善を図るためヨルダン政府は、同技術で先行する日本の電力の協力を求めて、日本政府に支援を要請。これを受けてJICA事業として19年より、東電設計と三菱総合研究所は、技術協力「再エネ系統統合と安定供給の促進プロジェクト」を通じて「ソフト面での能力強化」(JICA)を図ってきたが、これと並行してJICAは今年度より、ハード面での改善も支援することを決定。新たな支援プロジェクトとして電力系統運用能力強化計画をスタートさせるもの。
 東電設計などのこれまでの調査によって、系統運用における阻害要因が「保護リレー装置の機器更新が滞っていること」にあることが判明したため、新たな支援事業では、ヨルダンと隣国エジプトを結ぶ唯一の国際連系送電線の起点となっている、アカバ変電所を含む8か所の基幹変電所の保護リレー装置を、保守性に優れた最新のデジタル保護リレー装置へと更新する改修が中心となる。プロジェクトの第一弾となる準備調査は、ヨルダン電力公社や同国エネルギー鉱物資源省と協力し、現地において関連情報を収集した上で、同支援事業を日本政府の無償資金協力として実施する妥当性などを検証すると共に、日本企業の受注を視野に入れた保護リレー装置のリプレースに向けた概略設計・事業計画の両策定と概略事業費の積算なども行う。
 業務期間は9月1日~23年6月末までを予定しており、調査委託会社は来月中に決定する。なおヨルダンでは、中部電力が、14~16年にJICAから受託して「電力セクターマスタープラン策定プロジェクト事業」を行っている。