主な記事 詳細

過去の主な記事

経産省 技術力低下への懸念が原子力産業で増大

 経産省が三菱総合研究所への委託事業として昨年度実施した、原子力産業に関するアンケート調査の結果から、国内原子力関連企業において、5~10年後の「自社の技術力の低下」に対する懸念が増大していることが分かった。東日本大震災以降、原子力事業の見通しが不透明な中で、19年12月の同調査時点では、技術力・競争力の低下といった問題は未だ顕在化していないものの、〇製造コストの高騰、〇部品・部材の入手困難、〇自社の技術者の維持・確保の困難―などの問題に各企業が直面していることが判明。16年度に実施した同様の前回調査結果と比べて、これらの問題が今後深刻化していくことを懸念する企業の割合が高まり、ビジネスのバランスを変更して原子力関連事業以外を強化した―とする割合も、前回調査の約1.5倍となった。
 同アンケート調査は、特に原子力サプライチェーンに焦点をあてて、各原子力関連企業が抱える課題と、それに対する適切な施策のあり方を具体的に検討することを目的に、昨年度行った国内外の原子力産業に関する調査の一環として実施。サプライチェーンの最上位に位置する原子炉メーカー3社と、近年取り引き実績のある企業354件を対象にアンケートを送付し、このうち45・2%にあたる160件の回答を得た。主な質問事項は、原子力関連事業の現状、製品・サービスの納入先・競合状況、人材採用・維持・育成、東日本大震災の影響、海外展開の実績・今後の意向などについて。回答した企業のうち福島第一原子力の廃止措置を除く、一般廃炉分野に参入済みの企業は全体の1割弱で、そのうちの5割が、廃棄物管理に関する事業を実施。一般廃炉分野に未参入の企業のうち約25%が、今後の参入意向・予定が「ある」と回答した一方で、それ以外の約75%は「ない」もしくは「わからない」と回答しており、全体として一般廃炉への参入は、未だ活発な状況に至っていないことが分かった。その理由として事業者は、廃止措置計画をはじめとする事業全体の見通しが不透明であることや、経験者不足、技術伝承など社内体制の構築を、今後の一般廃炉分野での展開・新規参入の課題に挙げた。
 また同調査では、売上高、営業利益率、受注高は、東日本大震災前は回答企業全体で増加、もしくは一定の傾向があったが、震災以降は一転して減少傾向を示していることを確認。原子力関連の売上高、営業利益率、受注高、設備投資費、研究開発費、従業員数の6項目については、「増加傾向」の企業(33件)と「減少傾向」の企業(64件)が存在しており、後者においては東日本大震災以降、原子力関連事業以外を強化している傾向があることが分かった。