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関西電 CO2分離回収開発がパイロット試験段階に

 関西電力が川崎重工業、地球環境産業技術研究機構(RITE)と共同で実施した、省エネ型CO2分離・回収技術の研究開発事業が今年度から、パイロットスケールでの実用化試験段階に入ることが決まった。同事業は、15年度から経産省の「CO2分離回収技術の研究開発事業」、18年度からはNEDOの「先進的CO2固体吸収材実用化研究開発」として実施。RITEが開発したCO2用固体吸収材を活用した移動層システムを、川崎重工が同社の明石工場内に設置して、石炭火力から排出される排ガス中のCO2を分離・回収するベンチスケールの実用化試験をこれまでに行った。関西電はこのうち、国内初の固体吸収材を用いた実証システムの評価を担当しており「石炭火力を保有する同社の知見、ノウハウを参考にシステムの基本設計を行った」(川崎重工)。
 火力などから排出される排ガス中からのCO2分離・回収は、環境負荷低減に向けた重要な技術と期待される一方で、エネルギー消費量の低減が課題になっており、同事業では吸収材循環量の増加と蒸気供給量の低減などにより、1tあたりの回収エネルギー1.5 GJ 、1日あたりの回収量6.6t、回収率90%をそれぞれ達成。分離回収コストも事業目標である1tあたり2000円台に達する成果を上げており、次のステップとなるパイロット試験の実施を川崎重工とRITEがNEDOの「先進的CO2固体吸収材の石炭燃焼排ガス適用性研究」として提案した。このほど同提案が採択され、今年度から24年度までの5年間にわたり、実燃焼排ガスを用いた実用化試験に取り組むことが決まった。
 具体的には、ベンチスケールの移動層システムを8倍規模にスケールアップした、1日あたり40t規模のCO2を回収するパイロット試験設備を、石炭火力構内に設けて実ガス試験を実施。併せて固体吸収材の性能向上や製造技術・シミュレーション技術の高度化を進め、同試験に反映する。同事業に63・5憶円を充当するNEDOは、30年までに固体吸収法の技術確立を目指している。同事業では当初、関西電の舞鶴火力(石炭、計180万㎾)で19年度以降に、実用化試験設備を設置することを想定。今年度からパイロットスケールの設備設置に着手する川崎重工は現在、NEDOとの間で契約に向けた詳細検討を進めており、設備の設置場所については来月末頃にも決定する見通し。