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関西電 トロバス保存が決定、大町市で里帰り式

 関西電力が、18年に運行を終了した関電トンネルトロリーバスの、現存する最後の1台となっていた「300型」の保存が決まった。「トロバス」の愛称で長く親しまれた同バスは、立山黒部アルペンルートの扇沢~黒部ダム間の利用者の脚として、関西電が運行を開始した964年から54年にわたって利用されてきた。昨年からは電気バスに役割をバトンタッチしたことから、関西電は「トロリーバス事業にかかる鉄道事業の廃止」により全15台を廃車・売却したため、現在は富山県高岡市に現存する最後の1台を除いて全て解体されている。これを憂えて「長年に渡って大町の歴史と共に存在してきたトロバスを、歴史遺産として後世に語り継ぐ必要がある」(牛越徹・大町市長)との判断から、市長自らが実行者となったクラウドファンディング(READYFORふるさと納税)に「解体を待つ奇跡の1台~トロバスを保存して守りたい!」プロジェクトを立ち上げ、現在は企業所有となっている最後のトロバスの買取費用と、大町市までの輸送費用となる180万円を目標金額に、今月10日より浄財の提供を全国に呼び掛けていた。
 その結果、募集開始早々の12日時点で目標金額に到達したことから、同トロバスの保存が決定したもの。市が採用した、ふるさと納税のファンドスキームでは、受付締め切り日に設定した来月末までに寄せられた総額を全て、対象プロジェクトの履行に充てることができるため、市は新たな目標金額(300万円)を設定して「寄せられた浄財を車体のコーティングや補修、設置場所の整備費用などに充当させる」(市観光課)という。保存プロジェクトを立ち上げた牛越市長は「異常気象が叫ばれる今だからこそ、環境に配慮し、電気が動力のトロバスを採用した開業当時の先人たちに想いを馳せて欲しい」との考えから、関西電の協力を得て、市内の小学校6年生を対象にした「黒部ダム見学会&トロバスの見学会」を、総合学習のプログラムとして行うことも決めている。計画の実現に向けて市は、6月県議会で新規事業としての予算化を図った上で、翌7月にファンドの大口協力者を迎えた「里帰り式」、さらに8~9月に関西電を迎えた「お披露目式」を開催する予定だ。