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エネ庁 福島浮体式洋上風力通じ撤去工法を検討

 経産省エネ庁は今春から、福島イノベーション・コースト構想の一環として取り組む、福島沖での浮体式洋上風力システム実証研究を通じて、浮体式風車などの撤去工法に関する検討を開始する。福島県浜通り地域における、東日本大震災からの地域経済の復興に向けて、国・県・地元市町村は一体となって、同構想の実現を目指しており、中でも新たなエネルギー関連産業の創出として、同実証研究とその事業化による風力関連産業の集積が期待されている。そのためエネ庁は11年度から、福島洋上風力コンソーシアムへの委託事業として、同実証を推進。同コンソーシアムは13年10月に世界初の浮体式洋上変電所(日立製作所製)を設置した後、2000㎾(日立製、ダウンウィンド型)、当時世界最大級の7000㎾(三菱重工業製、アップウィンド型)、5000㎾(日立製、ダウンウィンド型)の浮体式風力各1基を順次設置して実証を進め、その成果を昨年8月に総括的に評価すると共に、今後の自立的な運用の可能性について検討し、報告書に取りまとめている。同報告書を踏まえてエネ庁は、同実証研究の最終段階として、浮体式風力の撤去工法などに関する検討に乗り出すもの。
 報告書を作成した同実証の総括委員会は、2000㎾風車の稼働率・設備利用率は概ね商用水準である―と判断。一方で、設備容量あたりの維持管理費が単機では割高になる傾向にあり、自立的に運用するためには同費用の低減が必要であることを指摘した。また、5000㎾風車に関しては、評価時点での運転期間が1年5か月と短いことなどを勘案して、実証運転を継続し、十分な運転期間の下で信頼性の検証を行うことを求めた。さらに、実証機のうち最大規模の7000㎾風車は、不具合などの影響により設備利用率が低い状況が続いたことを踏まえて、実証研究としての一定の成果は出ているものの、研究・開発段階を脱していない状況であり、今後の安定稼働は難しい―と判断。これを受けてエネ庁は、今年11月頃から撤去準備に着手し、来年4月から撤去工事を開始する方針を固めた。同工事に向けて来年度より、必要となる許認可の内容や取得方法をはじめ、設備を洋上から撤去し、解体・処分を行う工法の検討を開始。海外の作業船の活用や、海外における解体・処分作業の実現可能性も含めて、複数案の工法を検討する。
 同報告書では、実証の施工事業者である清水建設が示した試算結果を示しており、同社は同事業における風車・浮体・変電所・ケーブルなどの撤去費について、発電事業の一部として計上した場合、現状では民間事業としては困難な水準―と指摘。その要因として、○同実証機は計画・設計時点で、撤去工法まで十分に考慮されていなかった、○一般的に日本は欧州と比較して洋上施工の経験が乏しい、○設置海域の海象条件によって施工可能な期間が限られ、その結果傭船日数が多くなる―などを挙げている。同試算結果を踏まえて総括委員会は、7000㎾風車の撤去準備を進めると共に、安全性・経済性を十分に考慮した撤去工法と、撤去費用の低減策を検討することを提言している。