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秋田送電 送電工事に関する実務マニュアル策定

 東北電力が出資する秋田送電は、風力導入のための送電設備の構築に関する報告書を策定した。同報告書は、経産省エネ庁の補助事業として、14年度から取り組んだ「風力発電のための送電網整備実証事業」の成果について、今後新たに送電線工事を実施する際に有効となるよう、実務的な観点から体系的に整理。風力事業者に留まらず、広く再生可能エネルギー事業者が活用できるマニュアルとして取りまとめたもの。東北(東北自然エネルギー)、中部、関西の3電力が参画し、同県の秋田港と能代港地点で計画を進める、洋上風力の導入に向けた送配電設備の構築といった具体的な事例を基に、○実務的な検討項目を順序立てて体系的に整理、○各設計項目内容の見える化、○コスト分析・削減策を充実―の3項目を柱とした内容となっている。

 このうち能代港洋上風力(8・82万㎾)の送電設備(66 kV・亘長8.8 km)における建設コストに関しては、①調査・設計1.1億円、②地中送電線工事22・5億円、③変電所工事7.4億円―計31億円(税抜)と試算。秋田港洋上風力(5・46万㎾)の送電設備(154kV・同5.0 km)は、①0.8億円、②10・9億円、③6.3億円―計18億円(同)としており、さらにこれら両事業の建設コストを分析した結果、総コストに占める各工事の比率は、いずれも土木工事・ケーブル敷設工事といった地中送配電工事が全体の約60%を占めることが判明。地中送配電工事では、ケーブル自体の敷設工事よりもケーブルを入線するための管路などを埋設する、土木工事のコストの割合が高く、地中送電線工事でのコスト削減には、土木工事コストの削減が重要―と指摘した。

 一方で秋田送電は、これらの費用を電力広域的運営推進機関が公表する「送電設備の標準的な単価」と比較。その結果、66 kV変電所工事を除いて、標準単価以下であることから、能代港と秋田港における両洋上風力の建設工事費用は妥当である―ことを確認した。風力開発に適した地域が限られていることから近年、特定の地域に立地が集中する傾向にある一方で、送電線などの電力系統設備は、送電先の需要規模に応じて敷設しているため、需要規模の小さい地域で大規模な風力発電が計画された場合には、最寄りの送電線の設備容量が不足。このため、特定の地域の設備容量上の制約をクリアし、風力発電の大幅な導入拡大を実現していくことを目的に、国が北海道と東北の一部地域を「特定風力集中整備地区」に指定して、地域内送電網の整備と、その技術的な課題の実証に対する支援を行うこととなり、秋田送電は14年9月、東北地域で実証を行う事業者として採択された。同実証に対して東北電は、地元電力会社としてFSに関する技術協力を行う方針を提示。同事業による風力の開発地域や規模、複数の風力の集約などにより、風力アクセス設備の規模が大きくなることに加え、連系方法も複雑になることが想定されることから、柔軟で実現性の高い設備を形成していく必要がある―と判断し、秋田送電に500万円を出資すると共に、取締役を派遣している。